

石けんの歴史が始まるのは紀元前3000年前、すなわち今から5000年前にさかのぼります。
当時の人はどのようにして石けんを発明したのでしょう。
発明というより、発見と言った方が良いかもしれません。
始まりは「不思議な土」を見つけたことでした。
見つかった場所はメソポタミア地方、今のイラクの辺りに位置するサポーの丘です。
サポーの丘では、定期的に生贄の羊を焼いて神に供える習慣があったそうです。
そこでたまたま手に付いたサポーの丘の土を川で洗おうとしたら、アワが出てきてウソのように
よごれが落ちたことから、
それ以来サポーの丘の土は「不思議な土」と言われるようになりました。
実はソープという言葉は石けん誕生の地である、このサポーを起源としているのです。
本格的に石けんが製造されるようになったのは、ローマ時代。
ヤギの脂と木の灰を混ぜて石けんが作られるようになりました。
しかし、当時の石けんは、使うと肌がひりひりするという代物で、評判はあまり芳しくなかったようです。
5000年前のサポーの丘では牛や羊が祭壇の上に焼かれ、脂はジュウジュウと
下にたまった灰にしたたり、炎につられて煙が天に昇る
という石けんが出来る条件が見事に整っていたのです。
まさに自然の恵みと言えるでしょう。
石けん製造業が興ったのは8世紀。
地中海沿岸で、オリーブ油と海藻灰ソーダ(今で言う苛性ソーダ)から石けんが作られ始めました。
石けん製造はゆるやかに広がりを見せ、12世紀になるとイギリスでも本格的な石けん業者が登場します。
そして1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見してから一気に世界が狭くなり、
石けんは世界へと広がっていきました。
アメリカ大陸発見からわずか50年後には、ポルトガルの船が種子島に漂着、
その時はじめて日本に石けんが伝わったと言われています。
あの織田信長も石けんを使ったというエピソードが残されているのです。
しかし、当時の石けんはたいへん高価で、
かなりのお金持ちでさえ日用品としては使えないほどだったと言います。
中世から近世にかけて、長い間高い人気を得ていたのが香水でした。
当時、汚れを落として、カラダの匂いを香水でごまかすというのが主流で、
石けんは一般的ではありませんでした。
石けんが一般家庭に広がるまでは、産業革命以降のことです。
1790年苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の製造方法が
フランスの化学者ニコラス・ルブランによって発見され、
工業的にアルカリから作られるようになって以後、
苛性ソーダで多量の石けんが生産されるようになりました。
ちなみにこの苛性ソーダの製造方法は、ルブラン法、ソルベイ法、電解法へと進化をとげ、
現在は海水の塩を電気分解して作られています。
大量生産が可能になれば、おのずと価格も手頃になり、瞬く間に石けんは庶民へと広がり、
様々な人に使われるようになりました。
しかし多くの人が使えば、多くのニーズも生まれてきましたが、様々な肌のトラブルも起きました。
その都度、石けんは化学者たちの手で改良がされてきました。
こうして、現在では、顔やボディ用、食器や洗濯用など、様々な目的別の石けんが使われるようになり、
効果や香り、色や形も驚くほど多くの種類が出回るようになりました。
ウイスキーや焼酎などのアルコールに、水を入れるときは混ざりますが、
油を入れると交じり合わず、油が上、アルコールが下と上下に分かれます。
この2つの物質の境目を「界面」と言い、これは「アルコール」-「油」、
つまり「液体」-「液体」の場合だけではなく、
「気体」-「気体」、「気体」-「固体」、「液体」-「固体」
の境目も同様に界面と言います。
但し、「気体」-「固体」や「気体」-「液体」の場合は、
その境目を一般的には表面と言うことが多いと思います。
この界面に働きかけて、「界面張力」(界面をできるだけ縮めようとする力)を低下させる物質を
「界面活性物質」と言います。
身体や顔を洗う洗浄剤を始め、洗濯用の洗剤や食器洗い用の洗剤まで、
私たちのまわりには「泡で汚れを落とす」洗浄剤が数多くありますが、
この洗浄剤は、大きく2種類に分けられます。
そのひとつが石けん。そして、もうひとつが界面活性剤です。
石けんはもともと偶発的に発見された自然界の産物を
人間が忠実に再現しているに過ぎないものである一方、
界面活性剤は人工的に作り上げられたものという、大きな違いがあります。
さらに、石けんはベースに動物や植物など自然界にあふれた油脂を用い、
それに苛性ソーダや苛性カリなど、やはり自然界のアルカリを加えて、
自然の気圧、つまり常圧下(1気圧)で作られます。
使われる原料や作られる環境、何れも自然界に存在する条件下で製造されるのです。
一方、界面活性剤は石油(一部動植物やアミノ酸など)をベースとして使用し、
多種類の合成助剤を加えて高圧下で作られています。
場合によっては、50気圧という非自然的な圧力をかけて製造されるのが界面活性剤です。
最近では、界面活性剤から作られる「合成界面活性剤」は洗濯洗剤や台所洗剤くらいにしか
使われておらず、肌を洗う洗浄剤に使用されるのは
「植物性界面活性剤」や「アミノ酸系界面活性剤」と呼ばれるものが中心となってきました。
しかし、石油系の「合成界面活性剤」と植物由来の「植物性界面活性剤」はどの程度違うのでしょうか。
以下にそれぞれの代表的な界面活性剤を記しました。
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
この2つの界面活性剤ですが、
上段が「合成界面活性剤」で、下段が「植物性界面活性剤」と言われるものです。
この2つの違いは中央部に書かれている「アルキル」と「ラウリル」、ほんの一部分の違いに過ぎません。
「アルキル」という石油から採られる原料を使っているのか、
ヤシ油から採られる「ラウリル」という原料を使っているのかの違いで、
合成か植物性か区別されているのです。
しかし、それ以外に使われている「ポリオキシエチレン」も、「エーテル」も
全て石油系の原料で作られています。
「ラウリル」だけが植物由来だからという背景のみで植物性界面活性剤といわれているのが現状です。
もちろん、この2つの界面活性剤の機能や目的、毒性などに違いは殆どありません。
同じ合成洗剤でも、台所用や洗濯用、住居用の場合は、
「家庭用品品質表示」という法律(経済産業省)により表示が義務づけられているため、
容器に「合成洗剤」とはっきり書いてありますから、見分けるのは簡単です。
一方、洗顔料やボディーソープなどは化粧品類として扱われ、厚生労働省の所轄となります。
これらの化粧品類は「薬事法」で管理されるのですが、パッケージを見ても
「合成洗剤」とはっきり書いておらず、書いてあるのは配合されている成分だけですので、
一般の方は成分名を見ただけで、それが界面活性剤なのか石けんなのかを見分けることは
むずかしいのです。
そこで、家庭で簡単に界面活性剤と石けんを見分ける方法をご紹介します。
まず、透明なコップに調べたい洗浄剤と水を入れて泡立てます。
そこに酢を1、2滴、たらしてみてください。
合成洗浄剤の場合は、泡は消えずに洗剤液が透明になり、石けんの場合は、泡が消えて白く濁ります。
また、複合石けんと呼ばれる界面活性剤と石けんが混ざったタイプのものは、
泡が消えませんが、液は白く濁ります。
ただし、最近は石けんと同じような反応を示す界面活性剤もありますので、
石けんにこだわる場合は、メーカーに問い合わせてみるといいかもしれません。
現在、一般的に販売されている石けんには花の香りや果物の香りなどの「香料」というものが
使用されていて、それが石けんの香りの素になります。
陽鄙(ひなたひな)にはその香りの素「香料」は使用しておりません。無香料です。
しかし、陽鄙(ひなたひな)に香りが全く無いかというとそのようなことはありません。
少しですが、なにかの香りがします。
では、その香りの素は何かというと、石けん素地に含まれる脂肪の香り「脂肪臭」になります。
無香料の石けんといわれるものの中にもこの「脂肪臭」があるものが多くあります。
また、この「脂肪臭」は脂肪の種類によって、香りが強くなったり、弱くなったりします。
「脂肪臭」の香りが強い石けんにはオレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの
香りの強い脂肪が豊富に使われているかも知れません。
ちなみに、陽鄙(ひなたひな)の石けん素地には植物性の脂肪分を使っていますが
その脂肪は香りの強いものではありません。